モビリティシステムサービス
生活交通と観光需要の両立を支える新たな運行モデルの構築
南足柄市役所様
2026.04.10
南足柄市では、路線バスが運行しない時間帯に9人乗り小型車(ハイエース)を代替運行する新たな公共交通モデルを構築し、令和7年10〜12月に実証運行を行いました。
Will Smartは同事業で、人口減少や運転士不足に対応するためデジタルで運行を最適化するシステムを開発しました。
今回は南足柄市役所のご担当者様に、サービス導入の背景、実証運行で得られた成果、そして今後の展望についてお話を伺いました。
導入システム

導入の背景と目的
──小型車による実証運行を開始した背景について、あらためて教えてください。
南足柄市では令和3年頃から、市内の路線バスで運転士不足等を理由とした減便や路線の撤退が相次いでいます。特に山間部に位置する北足柄地区においては、地域住民や観光客の移動の利便性が著しく低下していました。
当該地区ではバス事業者から路線撤退の意向が示されており、当該バス路線の運行を維持するため、市が運行経費の赤字分を全額負担しています。
そこで、減便や路線退出により交通空白が生じている当該地区への代替交通手段を確保し、沿線住民及び観光客等の移動の利便性を維持・向上するとともに、運転士不足の状況に対応するために、大型二種免許を必要とする路線バスから、普通二種免許などで運転可能な小型車へ転換が可能かを明らかにする実証運行を実施することとなりました。
本実証運行では、路線バスが運行していない時間帯に小型車を運行し、減便前の水準まで当該地区の公共交通の便数を増やすことで、移動需要を把握するとともに小型車転換の実現性を検証することを目的としています。

導入後の反応と利用状況
──実証運行開始後、住民・地域団体・学校・医療機関・交通事業者などから寄せられた主な反応をお聞かせください。
実証運行について、住民からは「運行本数の増加で外出機会が増えた」「外出手段の選択肢が広がった」とのご意見をはじめ、小型車の運行継続を望む声を複数いただきました。バス停の位置や車両のサイズ感にも満足の声が多く寄せられています。
一方で、キャッシュレスなどの支払い方法の拡充や、日曜・祝日・夜間の運行を望む意見もいただいておりますので、今後の運行方法を検討する際の参考としたいと考えています。
また、運行事業者からは土曜朝便の運行時刻の見直しや、住民への周知・PR方法の改善に対するご意見をいただきました。利用状況は、実証運行期間中の延べ利用者数が約600人弱で、実証運行が進むにつれ、やや増加しました。時間帯では日中(10〜13時台)と土曜夕方(16〜17時)の利用が比較的多く、平日朝(8時台)や夜(19時台)は少ない傾向でした。利用目的は通院・買い物が多く、通勤も一定割合見られました。利用者属性では65歳以上が約40%ですが、40〜64歳も比較的多く利用していました。

──実証を通じて、特に「効果を実感した点」や「利用者から好評だった点」があれば教えてください。
地域住民の移動手段の動態を見ると、路線バスから小型車への転換が見られ、これは実証運行の成果の一つと考えられます。
また、自家用車の運転・送迎や徒歩・自転車などから公共交通へ転換する事例も確認されており、新たな公共交通の需要の創出につながっていることが確認できました。
同一区域内における路線バスと小型車を合算した利用状況は、実証運行前に比べ平日が約5%、土曜日が約22%増加しました。路線バスが運行していない時間帯に小型車を運行することで、移動の利便性が向上し、当該地区における公共交通の利用者が増加しました。
さらに、既存の路線バスの便を減便し、小型車を代替交通として運行した時間帯については、平均乗車人数が9人以下であり、小型車への転換が可能であることが検証できました。

今後の課題
──実際に運行を開始して見えてきた課題があれば具体的に教えてください。
利用する区域によって、利用者による予約の要否が異なる制度設計でしたが、一部の利用者が「乗車の際はすべて事前予約が必要である」と市の意図と異なる認識をしている方もいらっしゃいましたので、住民への周知・PR方法の再検討が必要であると考えています。加えて、事前予約制を導入している区域の利用数が低調であったこと、運行曜日や運行本数について改善要望があったこと等から、ダイヤ編成や運行ルート等についても見直しが必要であると認識しています。
──今回の当社との取り組みに関して、改善してほしい点や特に評価している点があれば教えてください。
今回のシステム開発に際し、限られた時間で柔軟にご対応いただいた関係者の皆様に、心よりお礼申し上げます。
全国で交通の実証事業が活発なため、運行実績を速やかに把握できることは重要です。現状は一定期間ごとにデータ提供を受けていますが、運行データにリアルタイムでアクセスし、状況を即時に把握できる環境を整備したいと考えています。リアルタイムにデータの閲覧が可能になれば、他の地域への展開や多様な利活用が進むと考えます。
また、高齢化率が高く、アプリやインターネットによる予約が利用の障壁になっている方もいらっしゃるため、電話による予約を継続するとともに、アプリ・インターネット・電話を組み合わせたハイブリッドな予約体系を構築することが望ましいです。併せて、高齢者が抵抗なくスマートフォンやインターネットを利用できるよう、操作教室や住民向けの体験機会を設けることが効果的と考えています。
システム提供事業者のご協力・ご支援をいただけますと大変ありがたく存じます。

──今回のルート以外にも、交通空白地帯として課題があるエリアはありますか?
小型車運行以外に検討している交通施策があれば教えてください。
国土交通省が実施している「交通空白のリストアップ調査」では、市内全域を交通空白地域として捉えています。
北足柄地区の小型車転換実証運行については、改善点を踏まえ、令和8年度も引き続き実証運行を実施する予定です。
その他に、令和8年3月に策定予定の地域公共交通計画に基づき、各交通モードに係る施策を推進し、交通空白の解消に取り組んでまいります。